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社会的な関心が高い分野、重点分野とされている研究を指導する方たちに、研究の意義や方法を聞きました。
井村 裕夫 氏「医療崩壊防ぐ抜本的対策を」
厚生労働省が医師不足を認め、中長期的に医師を増やす方針を打ち出したことが反響を呼んでいる。他方、医療事故に対する医療機関や医師個人に対する法的責任を追及する事例が相次ぎ、現場の医療者の萎縮的、防御的な対応を引き起こす事態が進行している。産科や外科といった訴訟リスクの高い診療科への医師志望者の減少や、出産を扱っていた産科病院が婦人科のみに転向するといったリスク回避の現象だ。このままでは「医療崩壊」は避けられないと早くから警鐘を鳴らしている井村裕夫・先端医療振興財団理事長・元京都大学総長に現状の深刻さと、必要な対策について聞いた。
第1回 10年後には外科医もいなくなる?
(掲載日:2008年6月30日)
- 国立がんセンターで麻酔科の医師が激減しているという記事がちょっと前に、全国紙で報道されました。医師不足は産科や小児科だけにとどまらないのか、と受け止めた読者も多いのではと思いますが。
井村 裕夫 氏
実は麻酔科の医師不足は、これまで新聞が書かなかっただけで、あちこちの大学で麻酔科の医師がやめてしまって困っているという実態があるのです。麻酔医というのは一番しんどい仕事です。外科手術が始まる2時間前には手術室に入り、外科医が来たときにはすぐに手術ができるような状態にしておかなければなりません。さらに、手術が終わった後、患者さんは集中医療室(ICU)に移されるわけですが、ICUは麻酔医の管轄ですから、手術後も患者の面倒を見なければなりません。極めて過酷な仕事なのです。
外科医の場合、腕を上げれば名医だと評価が高まるわけですが、麻酔医は褒められるということはまずなく、縁の下の力持ちです。医師不足のしわ寄せが、特に麻酔医のところに来ているということです。
もっとも外科医に関しても、昨年の外科学会総会で会長が講演して「このままでは10年たつと外科医はほとんどいなくなる」と警鐘を鳴らしています。外科医も減っているのです。実際に、韓国へ行かないと手術してもらえないという状況も生まれようとしています。外科の仕事もまた、大変だということで若い人たちがなりたがらないからです。仕事がきつい割に厚遇されているわけでなく、給料も他の科と同じですし、仕事がハードですから。例えば内科医なら70歳くらいまでできるでしょうが、外科医はそうは行きません。腕を磨いて有能な外科医になっても給料がよくなるわけでもなく、働ける時間も短いとなれば、希望者も少なくなるということです。
これまでは、それぞれの医師個人の使命感というものに頼ることができました。外科医は必要だ、その外科手術のためには麻酔医もいなければならない、ということで、外科医を志望する人も、麻酔医をやろうという人もいたから、やってこられたのです。しかし、しんどいところ、危険なところは嫌うという昨今の風潮では、仕事が比較的楽で、あまり事故のないところへ行こうということになってしまうわけです。
- 仕事のきついところが好まれないというのは、しかし、今になって始まったことではないように思われますが、最近になって何か特別の要因でも出てきたのでしょうか。
その一つの要因は、医師の数が抑えられてきたからです。医師の数は文部科学省と厚生労働省が相談して決めることになっています。文部科学省にはもっと増やしたいという考えがあったのですが、厚労省が抑えてきました。医師が増えると医療費が増えると思い込んでいたからです。慶應義塾大学の佐藤裕史教授が調べたところでは、慶應大学の医師数は米国ジョンズ・ホプキンズ大学の10分の1で、韓国ソウル大学の2分の1だそうです。日本でも医師数が多い大学に入る慶應義塾ですら、これが実態です。いかに日本の病院の医師が少ないかが分かるでしょう。
医師の仕事は、昔から過酷でした。私自身の経験でも当直で徹夜し、急患に対応した後、翌日夕方まで勤務するといったことはしばしばありました。しかし、それがだんだんひどくなっているのです。一つには医師としての従来の仕事に加え、新しい業務が増えています。書類を書いたり、丁寧なインフォームドコンセントなどに大変な時間をとられるようになっています。仕事が増えたのに定員は増えない。事故が起きるとものすごく非難されますから、それを防ごうとするため、いろいろなチェックが増え、その結果、ますます仕事が多くなっています。
病院に勤務する医師の絶対数が少ないことが、麻酔医や外科医不足に限らずいろいろな問題を生じさせているということなのです。医学の進歩に伴い医療が分化していますからいろいろな専門医が必要になっているのですが、そういうところにも人がいないのです。例えばPET(ポジトロン断層法)という検査法が注目されていますが、この画像を読める専門医がものすごく不足しているのです。放射線治療というのは大学を卒業して7〜8年たたないと一人前にはなれないのですが、この分野でもこの層に人がいないのです。
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続く
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2008年2月25日第1回【
iPS細胞でも臨床研究が鍵
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2008年3月 3日第2回【
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2008年3月10日第3回【
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2008年3月18日第4回【
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2008年2月26日ニュース【
医療紛争解決に統合的システム提言
】
2007年9月 4日オピニオン・井村裕夫・先端医療振興財団 理事長【
研究のモードの変化
】
井村 裕夫 氏のプロフィール
1954年京都大学医学部医学科卒業、62年京都大学大学院医学研究科博士課程修了、京都大学医学部附属病院助手、65年京都大学医学部講師、71年神戸大学医学部教授、77年京都大学医学部教授、89年京都大学医学部長、91年京都大学総長、97年京都大学名誉教授、98年神戸市立中央市民病院長、科学技術会議議員、2001年総合科学技術会議議員、2004年から現職。稲盛財団会長、研究開発戦略センター首席フェローも。日本学士院会員、アメリカ芸術科学アカデミー名誉会員 専門領域は内分泌学。
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