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ホーム > 楽しむ科学 > 理科の探検 > 2009年8月3日「ものづくりの現場のぞきたい!4 -古生物の復元画-」

理科の探検

"観る・知る・遊ぶ - 理科の楽しさを実感!!" をモットーに、理科の知識や実験・観察・ものづくりを紹介する月刊誌「RikaTan 理科の探検」の記事をご紹介します。

【 ものづくりの現場のぞきたい!4 -古生物の復元画- 】

(掲載日:2009年8月3日)
田崎 真理子 氏

ふだん、何げなく使っているものや、眺めているものも、ふとどこでどうやってつくっているのか考えてみたら、見当もつかないことってありますよね。このコーナーではそんなものづくりの舞台裏にRikaTan企画委員が潜入。さあご一緒に、ものづくりの現場をのぞいてみましょう。

古生物とは、恐竜のように絶滅してこの世界では出会うことのできない大昔の生物です。博物館の展示や、図鑑、絵本などで目にする復元画は、私たちに生き生きとした古生物の姿を伝えてくれます。一体どんなふうにつくられているのでしょう? 恐竜復元画の第一人者の小田隆さんのアケボノゾウ復元画プロジェクトを取材するために滋賀県大津市の成安造形大学を訪ねました。


古生物学の研究成果を最大限に反映させる

成安造形大学のキャンパスで公開された制作の様子
成安造形大学のキャンパスで公開された制作の様子
絶滅した生物の生きていた姿をよみがえらせるには、まずその生物が化石として現代に残した骨格や歯を組み立てます。骨格のすべてが一度に揃うことは極めてまれなので、同種か近縁の古生物の化石、現生の生物を参考にして復元します。古生物学の新しい知見が加わって、骨格が組み立て直され生物の姿勢などが大きく変化することもあります。そういった科学的な成果を反映させて復元画を制作するには、研究者と画家とのやり取りが重要です。

次に復元した骨格に筋肉を付け皮膚を被せていきます。解剖学の知見を使って、筋の付き方を推定します。現生の生物の解剖図も参考にします。足跡などの生痕化石や古生物と一緒に発掘された動植物の化石からは、生息環境を知ることができ、構図や背景に活かしていきます。


イマジネーションが科学を補完する

今回のモデルはアケボノゾウです。滋賀県多賀町から出た最も完全な骨格でも全身の7 割程度しか残っていなかったそうです。脊椎動物の体はほぼ左右対称なので、左右のどちらかの骨が欠けている場合には、比較的容易に補うことができます。さらに他の土地から出た同じアケボノゾウの骨を使って修復し、骨格標本が組み立てられました。

しかし、化石として残っていない物―例えば、鼻や耳そして皮膚の色は、どうするのでしょう? ゾウの鼻の長さは、きちんと水が飲めるくらいの長さだと推測できます。でも、耳の形や皮膚の色はお手上げです。科学の手が出せないこのあたりは、画家のイマジネーションに任されています。今回のアケボノゾウの耳の形、実はモデルの骨格が発掘された多賀町の形なんです。骨格の復元も研究者によって違い、さらに復元画には画家の個性が発揮される。そんな舞台裏を知っていろいろな復元画を見比べてみるのも面白いですね。

今回の復元画プロジェクトでは、成安造形大学のある滋賀県琵琶湖周辺でたくさんの化石が発見されているため、アケボノゾウがモデルに選ばれました。

滋賀県多賀町で発掘された骨格標本の復元を監修した小西省吾さん(みなくち子どもの森自然館)が、この復元画の監修に協力しています。


アケボノゾウとは?
約200万年〜100万年前に日本に生息していた肩高が2m程度の小型のゾウ(長鼻類)で日本に固有の種と考えられています。



製作の手順
1.   まず、参考資料を可能な限り入手し、検討します。アケボノゾウの骨格標本の写真や学術論文、動物の解剖図、写真集、絶滅大型ほ乳類の本などです。
アケボノゾウ復元骨格の写真 様々な資料
アケボノゾウ復元骨格の写真 様々な資料
2.   ラフスケッチを何枚も描き、研究者とやりとりを重ねて展示の目的にあった生物のポーズや構図を決めます。今回制作する2 作品のうちのもう1枚は水辺に倒れるアケボノゾウ。これは、化石の埋没していた状況の再現です。
もう1 枚の復元画用のラフスケッチ
もう1 枚の復元画用のラフスケッチ
3.   2分の1の大きさのパネル張りした紙に鉛筆で詳細な下絵(エスキース)を描きます。ここでも研究者とのやりとりは重ねられます。背景も描き込みます。
詳細なエスキース(下絵)
詳細なエスキース(下絵)
4.   キャンバスにアクリル絵の具で原画を制作します。実物大の約3分の1の大きさで描いています。この段階でも、研究者とのやりとりから、修正のコンテが入ります。完成後には、高品質の複写で3倍に拡大し実物大にして展示します。
 
研究者の小西さん(左)と真剣に話し合う小田さん(右)
研究者の小西さん(左)と真剣に話し合う小田さん(右)
 
原画を制作中 ゾウの皮膚の質感がすごい! 素早い筆遣いであっという間にしわにそって皮膚がのり、筋肉の凹凸が見えてくる
原画を制作中    


完成したアケボノゾウの復元画

アケボノゾウ復元画プロジェクトから生まれた雄のアケボノゾウの群れ。横向きとやや正面向きのアケボノゾウを1枚の画面で表現しています。200万年〜100万年前、古琵琶湖周辺の水辺、メタセコイアの茂る湿地を何頭ものアケボノゾウが闊歩していたのでしょう。この背景の生息環境の復元にも地層や化石の研究が活かされています。足跡が残る地面やメタセコイアの樹幹の様子は、滋賀県内の他の場所で見つかった化石林を参考に再現されました。


「アケボノゾウの群れ」2009年
「アケボノゾウの群れ」2009年 キャンバスにアクリル、112×194cm(成安造形大学特別研究助成金により制作)



資料提供: 多賀町立博物館
取材協力: 成安造形大学・みなくち子どもの森自然館
技術協力: ニューリー株式会社
制作協力: 森田 存、新岡良平、廣瀬達郎(成安造形大学デザイン科イラストレーションクラス小田研究室)


【参考文献】
小西省吾「アケボノゾウの骨格復元とその特徴 -多賀標本を例として-」 2000年 地球科学54巻 pp268-278
真鍋真総監修「恐竜の復元」 2008年 学研


【参考URL】
http://www.studio-corvo.com



田崎 真理子(たざき まりこ) 氏プロフィール
東京都在住。理科支援員。「あおぞら実験室」に参加。普通は目にすることのない復元画の制作現場に立ち会えて感激です。皆さんも機会があったら原画をご覧ください。


Rikatan 7月号 より転載

Rikatan 7月号 【りかたん】とは?
「観る・知る・遊ぶ・理科と自然の楽しさを実感!」をモットーとする理科大好きな企画委員たちがメーリングリストで意見を出しあってつくっている雑誌です。理科の楽しさを皆さんにお伝えしていきます。

7月号の特集は、「行こう! RikaTan的観光スポット」と、「世紀のイベント日食」。

「行こう! RikaTan的観光スポット」では、ご存知「超有名観光地」を科学の目線でとらえます。
「世紀のイベント日食」では、日本で46年ぶりとなる皆既日食を 安全に、かつ楽しく観察する方法を紹介していきます。

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