ウイルスの代わりに環状遺伝子のプラスミドを運搬役にして人工多能性幹細胞(iPS細胞)をマウス胎児の皮膚細胞からつくりだすことに、山中伸弥・京都大学教授(iPS細胞研究センター長)らの研究チームが成功した。同教授らが初めてiPS細胞を作り出したレトロウイルスを運び屋にする方法に比べ、効率は劣るが腫瘍(しゅよう)形成の心配はないとみられることから、将来、臨床応用する場合のより安全な方法になる、と期待される。
山中教授らが、レトロウイルスを用い初めてiPS細胞を作り出したときは、マウスやヒトの皮膚細胞に4つの遺伝子を導入する方法を使った。しかし、この方法では4つの遺伝子のうち一つが、腫瘍発生を引き起こすことが分かっている。その後、この遺伝子を除いた3遺伝子だけでもiPS細胞作製に成功しているが、3遺伝子が依然、染色体に挿入されている状態には変わりはないことから、なお腫瘍形成の可能性などが懸念されていた。
今回用いたプラスミドは大腸菌などの中にあり、染色体とは別に遺伝情報を伝達する能力を持つ。レトロウイルスを用いた場合と異なり、iPS細胞作製のため導入された遺伝子が染色体に入り込んで、腫瘍形成などを引き起こす心配はないと考えられている。実際に今回、プラスミドを運び屋にして導入された4つの遺伝子が染色体に入り込んだ形跡は見られなかった、と山中教授は言っている。また使われたプラスミドは、遺伝子組み換えなどでも広く使われており、レトロウイルスに比べ取り扱いがはるかに簡単という長所もある。
レトロウイルスを用いないiPS細胞の作製は、世界中で研究が進められている。アデノウイルスを運び屋として使い、外来遺伝子が染色体に挿入する恐れがないiPS細胞の作製に成功したという米ハーバード大学の研究チームによる報告が、米科学誌サイエンス9月25日号に載ったばかりだった。
今回の成果は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の一環として得られた。
2008年 9月26日科学誌サイエンス【副作用のない幹細胞】
2008年 9月12日ニュース【山中教授のiPS細胞製造法に特許成立】
インタビュー特別企画・石井哲也・京都大学iPS細胞研究センター・フェロー【iPS細胞で盛り上がった国際幹細胞学会】
2008年 6月19日第1回【2,500人超す参加者】
2008年 6月20日第2回【細胞移植臨床試験の指針案も】
2008年 6月 3日ニュース【iPS細胞の研究材料・方法をウェブで紹介】
2008年 6月 3日ニュース【多能性細胞から外胚葉への分化決定遺伝子発見】
2008年 5月27日イベントレポート【国際シンポジウム『iPS細胞研究が切り拓く未来』】
2008年 5月13日ニュース【幹細胞研究に弾みiPS細胞国際会議】
2008年 4月 8日ニュース【iPS細胞研究センターがウェブサイト公開】
2008年 3月27日ニュース【iPS細胞を研究用に提供開始】
2008年 3月19日ニュース【ヒトES細胞研究の規制緩和求め学会声明】
2008年 3月17日ニュース【山中伸弥教授に科学技術特別賞】
2008年 3月 3日ニュース【iPS細胞研究推進に京都大学など4拠点】
2008年 2月29日ニュース【iPS細胞研究で国際シンポジウム】
2008年 2月15日ニュース【がんの恐れ少ないiPS細胞 マウスで確認】
2008年 1月29日ニュース【iPS細胞で研究提案繰り上げ募集】
2008年 1月23日ニュース【京都大学にiPS細胞研究センター設置】
2008年 1月11日ニュース【iPS細胞研究支援に新年度30億円以上投入】
2007年12月26日ニュース【米科学誌の新技術ベスト50に山中伸弥教授ら】
2007年12月25日ニュース【iPS細胞研究推進で特別プログラム】
2007年12月18日ニュース【米カリフォルニア州がiPS細胞研究を支援】
2007年12月12日オピニオン・山中伸弥氏【チームジャパンで戦わないと負けてしまう】
2007年12月12日ニュース【発がん遺伝子用いないiPS細胞作製法を改善】
2007年12月10日ニュース【iPS細胞研究で急きょ、特別シンポジウム開催】
2007年12月 7日ニュース【iPS細胞の治療効果マウスで確認】
2007年11月21日ニュース【ヒトの皮膚から万能細胞】
2007年 7月 科学技術振興機構・研究開発戦略センター報告書「『幹細胞ホメオスタシス』国際技術力比較調査(幹細胞研究)】
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