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【2009年2月23日 歴史に学ぶ 】 コメントを投稿する

日韓両国ともに限られた研究しかない日韓併合時代の韓国医学教育に関する珍しいシンポジウム「20世紀前半の韓国近代医学教育史」が20日、政策研究大学院大学で行われた。

2004年に韓国学術院の招きでソウルを訪れた黒川清・日本学術会議会長(当時、現・政策研究大学院大学教授)が、朱軫淳・韓国学術院副会長(当時、現・高麗大学名誉教授)から、38年もの間、韓国の医学教育に尽力した恩師、佐藤剛蔵(1880-1960年)の業績を聞いたことが、このシンポジウムにつながった。佐藤剛蔵について調べるため、黒川氏が週刊新潮の掲示板欄で家族の消息を問い合わせたところ、熊本市在住の佐々木定氏が「孫」と名乗り出た。佐々木氏は黒川氏らとともに07年10月にソウルを訪問、朱氏と感激の対面を果たす。

この日のシンポジウムは、黒川氏、朱氏、佐々木氏とともに、佐藤剛蔵の業績をはじめとする韓国の近代医学教育史の研究を続ける石田純郎氏(日本医史学会前理事、医学博士)、李忠浩氏(駐福岡大韓民国総領事館領事)、出口俊一氏(大学発起業支援サイト「デジタル・ニュー・ディール」事務局長)、角南篤氏(政策研究大学院大学准教授)らが中心になって開いた。

シンポジウムでは、日韓併合時代の韓国の医学教育は、過去の歴史に日本もならった、という指摘が、李忠浩氏から出された。「医療は、異文化社会に侵入するときに、拒否反応がなく受容されやすいものとして利用されてきた」というわけだ。李氏によると、韓国における医学教育はキリスト教の普及と併せて米国人宣教師によって当初、進められたが、「日本の植民地統治が西洋の医療宣教師の活動を阻害し、日本だけが韓国の医師教育を主導するようになった」という。

石田純郎氏によると、医師教育で具体的な役割を担った組織が1902年につくられた財団法人同仁会(本部・東京・一ツ橋)で、「日本人医師を朝鮮や中国・満州に送ることが目的だった」という。佐々木定氏によると、祖父である佐藤剛蔵は、京都帝国大学医科大学を卒業直後の1907年に、同仁会本部の勧めで、同仁会直轄の平壌公立同仁会医院長として渡韓する。1910年まで平壌に滞在、医院付属の医学校で韓国人相手に通訳付で小規模の医学教育を行ったが、「韓国人生徒がよく、勉強し、よく覚えるので、本気で教育を行った」(石田氏)ということだ。同年に総督府医務教官、同医務課長となり、1916年に総督府医院付属医学講習所が京城医学専門学校となったのを機に教授に就任する。欧州留学を挟み、1926年、京城帝大医学部教授兼京城医専教授となり、翌27年から終戦の1945年まで京城医専校長として日本、朝鮮両国の医学生の教育にあたった。

朱軫淳氏が佐藤校長の教えを受けたのは、1943年から終戦時までの2年5カ月。日本人学生と朝鮮人学生の比率は3対1に決められており、学生同士の対立があったことを認めている。しかし、京城医専で受けた医学教育の内容は「戦時下の人、物不足でいろいろな制限があったものの大変充実した教育、訓練を受けた」と振り返り、佐藤校長を尊敬する気持ちも非常に大きい。

京城医専の朝鮮人学生の優秀さは佐藤剛蔵も認めていたということだが、石田氏の報告によると、京城帝大医学部でも「朝鮮人学生の成績の方が、日本人医学生よりも優秀で、成績不良で落第するのは、大部分が日本人」という日本人卒業生の証言があるという。李興基・ソウル大学病院・病院歴史文化センター研究教授は「韓国人医学生の成績は、大体上位圏に入る。にもかかわらず結局、大多数が開業するのは学校、官公庁の奉職に差別があったため」と報告の中で指摘した。

日韓併合時代の韓国医学教育については、これまで一部の限られた人だけの関心事になっていたことが、今回のシンポジウムから明らかになった。今後、研究が進むと思われるが、その意義は何か。「われわれが佐藤剛蔵の精神を表現する使節になり、こうした機会を重要でよりよい未来の日韓関係のための種と土台としたい」と黒川氏は言っている。

日本の科学技術力を環境問題など世界的課題の解決に活用する「科学技術外交」の重要性が叫ばれ、途上国との具体的な共同研究プロジェクトが動き始めている。日韓併合時代と現代とでは、状況が大きく異なるのは当然だ。しかし、ここでも鍵を握るのは資金以上に人であるのは、多くの人が認めるところだろう。組織や体制だけでなく、佐藤剛蔵という人に焦点を当てて歴史に学ぼうとする日韓両国の研究者たちの活動に注目したい。

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